最高裁判所第三小法廷 昭和26年(れ)1046号 判決 1951年8月09日
主文
本件各上告を棄却する。
理由
弁護人高林茂男、同横田隼雄、同佐々木正泰の上告趣意は末尾に添附した別紙記載の通りである。
被告人斎藤昭雄弁護人高林茂男上告趣意について。
公判開廷後引き続き一五日以上開廷しなかった場合においても必要と認める場合に限り公判手続を更新すれば足りることは刑事訴訟規則施行規則第三条第三号により明らかであり、且つ右施行規則は憲法に違反しないことは当裁判所判例の示すところである。従って論旨第一、二点とも理由がない。(昭和二四年(れ)第二〇〇〇号同二五年二月一五日大法廷判決、昭和二四年(れ)第二一二七号同二五年一〇月二五日大法廷判決参照)
被告人鈴木健三弁護人横田隼雄同佐々木正泰の上告趣意第一点について。
記録を調べて見るに本件起訴状には「日本政府所有」とあり、第一審公判において右起訴状は読聞けられこれに対し共同被告人斎藤はその通り相違なき旨を答えている。そして右供述は、原審が証拠に挙げているのであるから、所論のような虚無の証拠によって事実を認定したものではなく、論旨は理由がない。
同第二点について。
被告人鈴木健三と弁護人茂手木豊治両名連署の弁護人選任届は所論のように宛名の記載はないが原審の同弁護人選任届に押捺した受附印により昭和二三年一月三一日原審に提出されたものであることは明らかであるし又同弁護人選任届の日附中所論のように訂正され且つ加入した点がありしかも訂正加入した部分の筆跡が他の部分の筆跡と異っているとしても、それだけで右弁護人選任届が無効のものであるとはいえない、論旨は右訂正加入の部分の筆跡は受附印に記載された筆跡と同一であると主張するがこれは弁護人の独断にすぎないばかりでなく、かりに論旨の如く同一筆跡であるとしても偽造とか変造であることの確証のない限りこれを無効とすべきいわれはない。のみならず、原審において弁護人茂手木豊治は被告人と共に公判廷に出頭し同被告人のために種々弁論しているのである。従って論旨は採用できない。
同第三点について。
所論のように原判決は迅速を欠くものであるとしても判決に影響を及ぼさないこと明らかであるから破棄の理由とならない。論旨は理由がない。(昭和二三年(れ)第一〇七一号同年一二月二二日大法廷判決)
よって旧刑訴四四六条により主文の通り判決する。
以上は裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介)